BB会員季刊誌 :リプトン・ブルックボンドハウス

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2008年5月1日号

「秘密の花園」にみる 英国ヨークシャー地方のくらし

英国菓子・ハーブ研究家 北野 佐久子 氏 (写真も)

ヨークシャーの荒れ地、ムーア

幼い頃誰もが一度は読んだことがある古典的名作「秘密の花園」。でもその頃は主人公のメアリーが秘密の花園への鍵を見つける場面にドキドキしたり、歩けなかった少年コリンが車椅子から立って歩く場面に感動したり、話の筋書きのほうに一生懸命で、その舞台となっている場所がどこなのかなどということには気づかずに読み終えてしまっているのではないでしょうか?

メアリーの叔父の家のモデルとなったナッスル・ハワード

舞台となっているのは実はイギリス北部ヨークシャー地方です。両親を失い、インドから叔父の住むヨークシャーに引き取られることになった主人公の少女メアリーが馬車の中からまずはじめに驚くのがどこまでも海のように続くムーア、荒れ地でした。メアリーは馬車に揺られながらその果てしなく続くムーアを見て、「海ではないか」と付添い人のメドロックさんに尋ねるのです。海と見間違うほどの場所とはいったいどんな所なのだろう。そんな場所があるのだろうか、大人になって読み返してみると、なぜかこの描写に心が魅かれました。ヨークシャーで生まれ育った作者バーネットは馴染みのあるこの地のあちらこちらを物語の舞台に使ったと言われています。メアリーが海というその場所に立ってみたい。無性にそんな気持ちにかられてヨークシャーの地に出かけてしまったほどです。世界最大規模で、国立公園にもなっているこのムーアに実際立ってみると、そのあまりの広大さに吸い込まれそうな気分になります。メアリーが海と思うのも納得がいくほどの、どこまでも続くヒースの花で薄紫色に染まった広大な土地が続いているのですから。そこには物語の描写そのままにヒースの他にはハリエニシダの黄色い花が咲くだけで、何も生えていないのです。昨年12月に出版した翻訳本、「秘密の花園クックブック」(東洋書林)は、この大地が生んだともいえるヨークシャー地方のレシピを「秘密の花園」に出てくる場面と共に紹介した本です。ヨークシャー地方のスコーン、ヨークシャーラスカルもそのひとつですが、かつてはムーアに咲くヒースが堆積してできる泥炭で焼いたお茶のお菓子でした。講座では私が焼いたラスカルを味わっていただきながら、「秘密の花園」の舞台となった場所を私が撮ったスライドと共に巡り、その魅力を再発見していただけたら、と思っています。

ヨークシャーラスカル

幼い頃誰もが一度は読んだことがある古典的名作「秘密の花園」。でもその頃は主人公のメアリーが秘密の花園への鍵を見つける場面にドキドキしたり、歩けなかった少年コリンが車椅子から立って歩く場面に感動したり、話の筋書きのほうに一生懸命で、その舞台となっている場所がどこなのかなどということには気づかずに読み終えてしまっているのではないでしょうか?

【北野 佐久子 氏・プロフィール】 東京都出身。立教大学在学中からハーブに目覚め、日本人で初めてハーブソサエティーの会員に。渡英しハーブ園にホームステイしながら研究に励む。帰国後、ハーブの使い方やイギリスの料理とお菓子を紹介。結婚と同時に再渡英し4年間をウィンブルドンで暮らす。1女の母となって帰国し、イギリス文化を紹介。 著書に『基本ハーブの辞典』(東京堂出版)、『美しいイギリスの田舎を歩く!』(集英社be文庫)など。著書では自ら撮影した写真も好評。

ホームページ http://www.sakuko.com

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